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GS横島 リリカル大作戦!! 00話
東京タワーの第二展望台、その上の一角に、一つの人影があった。
下界を行く人々は、誰一人として人影の姿に気づくことなく、日々を当たり前のように過ごしていく…
よく見るとその人影は、まだ幼さの残る少年のようにも見えた、同時に人生に疲れ果てた老人のようにも見えた。
ふと、人影が何かを呟く。
「なぁ、××××、俺頑張ってるよ、あれから修行もちゃんとした、学校へもちゃんと通ってる、バイトの方も前よりかは皆頼りにしてくれてる…」
一息置いた後、何かを悔むようにしてから、人影は心を吐き出し始めた。
「でも、やっぱお前が居ないと駄目みたいだ、以前のようにおちゃらけてるけど、全然駄目なんだ…充実してるはずなのに、楽しいはずなのに、痛いんだよ、胸が、張り裂けそうなんだよ…」
人影はポケットから数個のビーダマのようなものを取り出しながら、また呟く。
「ずっと考えた、どうすれば、お前を救うことが出来るんだろうって…」
不思議なことにビーダマに字が灯っていく。
「過去に戻っても、それはもう、俺の知ってるお前じゃない…」
『死』
「俺が復活させたいお前は、あのお前なんだ」
『者』
「だから…」
『蘇』
「必ず、見つけ出してみせる…」
『生』
「お前を復活させる為の方法を…っ!!」
『探』
「そして取り戻して見せる!!」
『索』
「あの!!」
『転』
「黄金の日々を…!!!!」
『移』
人影が全てのビーダマに字を灯し終えると同時、その人影は閃光に飲まれ、消えていった……
今も宿るその想い
胸に抱き続けるのは、黄金の記憶
愛しき人への想いは、今尚身を焦がし続けて…
GS横島 リリカル大作戦!! はじまります
GS横島 リリカル大作戦!! 01話
(…おかしいわね)
ある屋敷の部屋の一つ、この部屋の主であるプリシラ・テスタロッサはありえない事態に戸惑いを覚えていた。
何者かが、この空間に侵入して来た事を感知した彼女は、すぐさま自らの探知魔法により偵察を行ったのだが…
(おかしい!?おかしいわ!!こんな小さな魔力で、この場所を特定して転移してたというの!?しかも次元振を隠蔽した状態で!?)
そう、件の侵入者からは魔力がほとんど感じられなかったのである。
本来、転移するだけであるならば、転送先の座標さえ把握してさえいれば、他の魔導師の手で転移することは可能である。
だがこの侵入者を知覚した時、プレシアは次元振を感じなかった。
どんな魔導師であろうとも、次元を渡る際には、次元振という振動が発生する。
つまりこの侵入者は、次元振を何らかの魔法で隠蔽し、尚且つその魔法の行使すらプレシアに知覚させなかったことになる。
(だとすれば、何故私の探索魔法に…まさか、この私を挑発している、と…!?)
プレシアは自分の知覚した魔力は、挑発であると判断した。
(これほどの実力、私一人では厳しいかもしれないわね、忌々しいけど、あの娘も一度こちらに呼び戻すしかないわね…)
こうして事態は確実に斜め上の方向へ加速して行く…
「ねぇ、フェイト、やめようよ、いきなり呼びつけるだなんて、きっとフェイトに酷い事する気だよ」
ここは日本の鳴海市、その高層マンションの一室で現在、フェイト・テスタロッサとその使い魔であるアルフは、プレシアから呼出しを受け、不振に思ったアルフとフェイトの押し問答が繰り広げられていた。
「アルフ……母さん、なんだか焦ってるみたいだった…」
「フェイト、あたしゃなんだか嫌な予感がするんだよ…今まであいつがこんな風に呼出すなんて一度もなかったじゃないか」
アフルがフェイトを止めるのには理由がある、フェイトはこれまで、親であるプレシアから過剰な体罰、いや虐待と言っていい程の仕打ちを受けてきたのだ。
更に、フェイトはロストロギアであるジュエルシードの回収を命じられている。
その回収作業には少なくない危険が生じ、アルフはもしここでプレシアから虐待を受ければ、その作業に支障が、そしてそれはそのままフェイトが更なる虐待を受ける可能性があることを危惧している。
先日フェイトから聞いたジュエルシード(シリアルNo.ⅩⅣ)回収時に少し邪魔が入ったという言葉もアルフの不安を掻き立てていた。
「私は、行くよ、母さんが、私を必要としてくれてるから…母さんは、二人で来いって言ってたけど、どうしても行きたくないなら、アルフはここで待っててもいいから…」
そう言われては、アルフはぐぅの根も出ない。
フェイトがプレシアの言葉を破って一人で行けば、被害を被るのは彼女だろう、それにアルフが言いたいのはそういう事じゃないのだ。
「わかったよ、あたしも行くよ、でもフェイト、頼むからあたしを心配させるような事はしないでおくれよ…」
アルフは絞り出すような声で、そう答えるしかなかった。
「うん、ありがとう、アルフ…」
さて、そうとは知らない我らが横島、彼は今…途方に暮れていた。
そもそも、横島が発動させた文珠『死』『者』『蘇』『生』『探』『索』『転』『移』
横島のイメージでは、××××を復活させる為の方法を得られる場所へと転移する予定だったのだが…
(むぅ、イメージ不足だったかもしれん)
それもある、更に言えば八文字同時制御、何度も失敗し、成功したのも始めてだった。
しかし文珠が正確に発動したのなら、この世界のどこかに、彼女を蘇らせる為の方法が存在する筈である。
横島的には、すぐ様その情報を手に入れる予定だったのだが、いかんせん周りに人の気配は感じられず、途方に暮れていたわけである。
(うーん、そうそう旨い話はないってことか、まぁ、ともかく行動してみますか…)
そうして横島はあてもなくトボトボと移動し始めた。
彼が転移して来たのは、数ある次元世界の中で、『時の庭園』と呼ばれる場所だった…
「ただいま、母さん…何か、あったの…?」
フェイトは時の庭園に帰っくると、第一声を期待と困惑を込めた声で発した。
これまで用もなく、自分を呼び出す事がなかった母親が、急に呼び出してきたのだ。
ジュエルシードを探す為にここを出てから、まだ少ししか経っていないとはいえ、フェイトは母親に会えるのが嬉しかった。
それと同時に少し不思議に思う。
今のプレシアはどうにも焦っている、フェイトは自分の母そんな姿をあまり見た事がなく、それ故に困惑していた。
「やっと帰って来たわね…まぁ、いいわ、それよりも…」
(ジュエルシードの事も聞いてこない…どうしたんだろう…)
「侵入者よ、この庭園に」
「侵入者…?」
フェイトは不審に思った、母ならそれくらいの相手くらい即座に相手できるだろう事は判っている。
フェイトには自分の母を超えるかもしれない実力の持ち主が居るなどとは全く予想出来なかったのだ。
「この庭園に、ついさっき時空振なしで転移して来たらしいわ、私にすら転移を気づかせるとこなく…」
それを聞いてフェイトとアルフは驚愕した。
プレシアに気づかれる事なく、時空転移をしてくるなど、一体どれほどの術者なのだろうか。
驚いている二人を置いて、プレシアは続きを話し出す。
「それでねフェイト、母さんね、今忙しくて手が離せないの、少し様子を見てきて貰えないかしら」
(それって、フェイトを捨て駒にするってことかい!?)
アルフが胸中で呻く。
プレシアにさえ時空転移を感知させない程の術者、彼女はそれ程の者を娘であるフェイトに相手にしろと言っているのだ。
「母さん…判りました、私が見てきます」
「頼んだわよフェイト、母さんもここで見てるからね…」
「はい、行って来ます…母さん」
いってらっしゃいの声は、返って来なかった…
『フェイト!?判ってるのかい!?これはどう見てもあいつがフェイトの事、様子見の為の捨て駒にする気だよ!?』
『そんなことないよアルフ…母さん、忙しいみたいだし、私に出来ることなら出来る限り期待には応えたいの』
アルフから悲痛な感情が込められた念話が飛ぶが、フェイトは盲信的にプレシアを信じとりあってくれない。
『それにね、私が母さんの願いを叶え続ければ、きっと昔みたいに優しい母さんに戻ってくれると思ってるんだ…』
『…』
アルフはその言葉を否定したかったが、そう言いながら微笑むフェイトに、何も言えなかった。
現在横島は困った状況に陥っていた。
時の庭園をあてもなくうろついていると、金髪の妙な格好をした一人の少女と一匹の犬(?)が空からやってきた。
横島はやっと人に会えた事を安堵し、にこやかな笑みを浮かべながら話しかけようと近づいたのだが…
「こ、こんにちわ~、僕横島っていいm「何の目的でこの世界に来たのですか」…へ?」
挨拶をしようとすると金髪の少女が、あまり友好的とは言えない態度で返してきた。
「何の目的でこの世界に来たのですか」
横島は今自分に向って放たれた言葉を考える。
(何のって…えーと、××××を復活させる方法を探しに来て、それでここにはそれがあるはずなんだよな?)
コンマ0.7秒で答えを導き出し答える、警戒してると思われる相手に対しては、素早く応えるのが一番だ。
「俺は、居なくなった人を蘇らせる為の方法を教えて貰いにきたんだ」
不審に思われないよう、素早く、いい笑顔をつけて横島はそう返す。
「戯言を、何が望みですか…」
しかし、説明不足だったのだろうか、金髪の少女は逆に警戒信を強くしてしまったようだ、犬(?)に至っては唸り声すらあげている。
横島は詳しく説明しようとして、ふと気づく、きちんと順序立てて説明しようとすれば、文珠のこと、はたまた自分の世界であったアシュタロスの反乱から説明しなくてはいけなくなる。
自分の手札を初対面の人間に晒すのは流石に躊躇われる、元の世界の上司の教えが、こんな所で仇になりはじめた。
「言えないんですね」
横島が悩んでるうちに金髪の少女が断言してくる、横島にとってちょっとマズい状況になってきたようだ。
「えーと、そ、そうだ、俺は違う世界から来て…」
相手は、歳は18歳くらいだろうか、まだ幼さが抜けきっていない顔をしており、額には赤いバンダナを巻いている、どこにでも居そうな普通の青年に見える、魔力も一般人より少し大きいくらいにしか感じない。
(だけど、油断は出来ない)
母から聞いた通りの相手なら、自分以上の手腕のはずだ。
相手を警戒している時に、このような気分になるのは始めてだが、この男は得体がしれない上、自分をおちょくっている。
フェイトは自分が段々とイライラしてくるのが判った。
自分の返答にヘラヘラと笑いながら、ズバズバと出鱈目を言い、更には。
(違う世界から来た?何を当たり前の事を)
先ほどからアルフの唸り声もどんどん酷くなっている、どうやらアルフも同意権のようだ。
相手はまともに交渉に応じるようではない、どうしてかわからないか腹が立つ。
横島という青年は相変わらずヘラヘラとした笑いを浮かべながら、訳のわからない話を続けている。
そして、フェイトとアルフの堪忍袋は、ついに弾けた。